Shiranami - Lyrics & Story



Shiranami Lyricks 

Hook

桜ちりぬる風の

なごりには 水なき空に 浪ぞたちける

桜ちりぬる風の なごりには 水なき空に 浪ぞたちける


Verse 1

ふと見上げた空には雲ひとつなく

このブルースカイ横切って行く飛行機を見てる

おれ 生まれたあの街から離れて遠く 

この異国の街 別の価値 此処ニューヨーク

いたずらなアルゴリズムに思い出す

悠久の記憶 いまなぜ? 溢れ出す

此処には無い吉野 でも 胸 花 咲かす

こみ上げる Fake memory に 涙を流す

花は咲きそして散るからエスティティック

身を結び 冬またぎ 芽を出す マジェスティック

恋に落ち 時が経ち 色褪せたとしても

消えない愛はプラスティック

足りないものばっか追い求め

下ばっかむいてたって何もねえ

上むいて歩くだけ Like a 坂本九

うつろいでく 後味がJapanese Blues


Hook

桜ちりぬる風の

なごりには 水なき空に 浪ぞたちける

桜ちりぬる風の なごりには 水なき空に 浪ぞたちける


Verse 2

Yo, ライジングサンの国から来た外人さん

日々空振り三振さ

初めて知る大変さ

無いアンサー 

Money money money chaser

また誰かのせいさ

こりゃ利己主義当然さ

って気づきゃ まさかおれがヘイター?

ただただ日々過ぎていた

ただ疲れていた

置き忘れたReason

ほら窓の外に New Season

いま耳元なるBeats

また書き出すこのLyrics 

喜びが、あふれでた

ふと涙、あふれてた

長いようで短いな

スヌーズするタイマー

そっと火を灯すライター

いま一息つきLaid back 

聳えるビル狭間

あるはずないあの桜

見上げたこの夜空

なぁ、また会う日までサヨナラ


Hook

桜ちりぬる風の

なごりには 水なき空に 浪ぞたちける

桜ちりぬる風の なごりには 水なき空に 浪ぞたちける


Title: Shiranami 

Artist: DAG FORCE 

Produce by @taka808 

Music Video by @k4mara2000 

ALBUM LINK ▶️ LINK

[Back Story] 

「Shiranami(白波)」で探求したテーマは、“無常観”です。
これは、日本人特有の「すべてのものは移り変わる」という感覚であり、日本人の美意識の核心にあるものです。無常観は、和歌や俳句といった日本の詩の中で古くから表現されてきました。

この曲のサビでは、紀貫之が1000年前に詠んだ和歌をサンプリングしています。 「桜花ちりぬる風のなごりには水なき空に 波ぞたちける」 この和歌は、桜の花びらが散ったあとの風の余韻に、水のない空に波が立っているように見える様子を詠んだ歌です。この和歌を口に出して詠んだとき、俺にはこれが、まさに“ラップ”のように感じられ、 和歌や俳句と現代の日本語ラップが地続きであるというインスピレーションが浮かびました。 

NYにも桜は咲きますが、日本のように感情的・精神的なレンズを通して見る文化はあまりありません。毎年春になるとNYの各地で桜の木を見つけるのですが、日本のように友人たちと桜を囲んで春の訪れを楽しむ姿がないことに、どこか寂しさを感じていました。

アメリカでは、いまだに日本のイメージは限定的です。かつての「芸者」「忍者」「富士山」が、現代では「アニメ」「寿司」「ラーメン」に置き換わっただけ。100年以上前、画家であり文人の岡倉天心はボストン美術館で日本美術が表面的にしか理解されていないことに苦悩したそうです。彼の名著『茶の本』は、日本の美学の精神性を西洋に伝えた先駆的な試みでした。そしてその試みが、今日の世界中の日本ブームの礎になったことに、とてもに感銘を受けました。

俺は、NYのストリートの現場でどんなに評価されようと「ヒップホップの本場で、誰にも求められていないことをしている日本人ラッパー」という感覚が拭えませんでした。どうしたら、日本語でラップをする自分に胸を晴れるのか、その正当性を表現できるのか、日々考えていました。 そして、当時住んでいたアパートの近くに咲く桜の木々を見ていたときに気がつきました、日本文化の根底に流れるあの感情、無常観こそ、今自分が表現すべきテーマだと。その閃きを与えてくれた桜の写真が、アートワークに選んだ1枚です。

俺たち日本人にとって、桜はただの花ではありません。咲く前の期待、満開の喜び、そしてはかなくも美しい散り際。そこには、まさに「無常」の美しさがあります。この無常感を俺は“Japanese Blues”と呼ぶことにしました。

この楽曲は、村上隆の「スーパーフラット」や、ニューヨークのスタジオで松山智一さんから伺ったお話にもインスピレーションを受けています。特に、松山さんが、ヒップホップのサンプリング技法を現代美術に応用している点に強く共感しました。
また、村上隆の「スーパーフラット」の概念に照らし合わせると、和歌のような高尚なファインアートと、日本語ラップのような大衆的なサブカルチャーとの間にある“平面性”を見出すことができます。西洋の文脈を日本的な視点で再構築するアーティストたちの姿に触れたことで、自分自身もそれに挑戦してみようという勇気をもらいました。

さらに、アルゴリズムによってアメリカで再評価された竹内まりやの「Plastic Love」がシティポップのアンセムとなり、またかつて坂本九の「上を向いて歩こう(Sukiyaki)」が日本語のまま全米ビルボード1位を獲得し、戦後バブルから急降下した経済恐慌中のアメリカで深く共鳴を呼んだ「現象」も背中を押してくれました。 先人たちの偉大な作品や試みに敬意を払いながら、俺も何か自分の中に流れる普遍的な感性を表現するチャレンジがしたいと思い、この曲を一つの“スタディ(研究)”として制作しました。

音の面では、Nujabesの系譜をたどるJazzy Hip-HopやLo-Fi Hiphopのサウンドイメージを織り込みながら、“日本的な感情”に根ざしたサウンドを表現してもらいました。100年前に岡倉天心が、新たな文脈を切り開いたように、俺も自らの日本語ラップでこの時代に意味のある何かを残したいと思いました。

作品として、この世界観を完成させてくれたのが、映像作家Kiyomasa Kawasakiによるミュージックビデオです。この映像は楽曲が生まれた街NYで、全編8ミリフィルムで撮影されました。かつて『茶の本』がニューヨークで出版されたように、この映像作品もまた、すべてのインスピレーションに対する最後のオマージュとなっています。

そして最後に、この楽曲をひとつにまとめ上げてくれたのが、世界で活躍する日本人ピアニストTakahiro Izumikawaの天才的なプロダクションです。彼
がこのトラックに込めた感情は、言葉では言い表せないほど深く、力強いものでした。

「Shiranami」は、アルバム『IMA』の中核を成す楽曲であり、その中心テーマである「無常」を体現しています。

この作品の制作に関わってくれた全ての方に、心から感謝とリスペクトを送ります。